2023年7月より本研究会の会長に就任いたしました。どうぞよろしくお
願いいたします。
近年、日本語教育学では、多様な研究方法が取り入れられるようにな
りました。質的研究では、ナラティブ分析によるライフストーリー研究
やエスノグラフィー、複線径路等至性アプローチなど、研究手法の多様
化が見られます。また量的研究では、母語話者・学習者の話し言葉コー
パス・書き言葉コーパスの開発に伴い、研究に使用可能なデータが整備
されてきました。さらに日本語教育の対象となる日本語学習者も多様化
の一途を辿っています。多様化に応じて求められる教材開発もICTの普及
により、新たな可能性が拡がってきております。
このような動向の中で重要だと考えるのは、現在、現場で教え研究を
続ける修了生と、教室で研究に励む大学院生を結び、それぞれの知見を
広げることです。幸い、本教室からは、これまでに多数の研究者・教育
者が巣立ち、日本語教育学や言語教育などの分野で活躍しています。彼
らからは本研究会の柱の一つである『日本語研究』でも協力を得ており
ます。本研究会は小規模ですが、それ故の利点を活かし、今後、研究発
表会と『日本語研究』をそれぞれの特徴を活かした交流の場と捉え、充
実させていきたいと思います。そのことが、会員個人の研究のさらなる
発展に繋がるものと信じております。
2024年6月
首都大学東京・東京都立大学 日本語・日本語教育研究会
会長 長谷川守寿
2006年東京都立大学から改組された首都大学東京には大学院人文科学研究科人間科学専攻日本語教育学教室がおかれ、教員・院生が日本語学・日本語教育学・言語学・言語教育学等の研究に励み、研究者・教育者が巣立ってきております。
また、本教室は東京都立大学時代から培われてきた日本語学・日本語教育学・社会言語学の伝統を重んじ、学際的な未来への視点も含めた教育研究活動を拡大しております。
こうした者たちの研鑽の発表の場、研究交流の輪を広げていく場として、2008年、「首都大学東京・東京都立大学 日本語・日本語教育研究会(略称:TMU日本語・日本語教育研究会)」を学会として立ち上げ、『日本語研究』を研究会誌として位置づけて活動を続けてきました。
『日本語研究』は、1978年に創刊され長年にわたる歴史を刻んで来ましたが、同誌の創刊は、東京都立大学において国語学の研究・教育を主導なさっていた故 中本正智先生の、大学院生に研究発表の場を提供したいというご意向によるものであったと聞いております。そのお気持ちは、先輩の諸先生、院生諸君によって引き継がれ、東京都立大学国語学研究室を母体として発行されて参りました。
その後、中本先生の御逝去や、大学の組織改変等がありましたが、ほぼ毎年刊行されてきました。また、「日本語学会」が2004年に「国語学会」から現在の名称に変更する際、学会誌 である『国語学』の新名称を『日本語の研究』としたのは、すでに『日本語研究』や 『日本語学』が別の学術雑誌として存在していたためだとのことです。このうち前者『日本語研究』は本研究会誌のことです。このような歴史に鑑み、首都大学東京・東京都立大学 日本語・日本語教育研究会発足にあたり、学会誌の名称は『日本語研究』を継続し、号数も創刊以来の号数を継続することとしました。
上記の通り2008年からはTMU日本語・日本語教育研究会を発行母体とし、学会の規定に基づき、編集委員会の査読を経た論文が掲載されてきております。
この度、研究会のWEBページのリニューアルに際し、『日本語研究』創刊号からのアーカイブを作成し、PDFで公開することとなりました。まだ、完全なものではありませんが、これまでの成果をできるだけ多くの方に見ていただこうという試みです。一部著者許諾に当たってはダニエル・ロングさん、作成に当たっては劉志偉さん、志喜屋カロリーナさん、ギム・ミナさんの協力を得ました。記して感謝します。
今後とも首都大学東京・東京都立大学 日本語・日本語教育研究会ならびに『日本語研究』に対しご支援ご指導の程、お願い申し上げます。
2017年2月
首都大学東京・東京都立大学 日本語・日本語教育研究会
西郡 仁朗 (初代代表)