一般言語学演習                

帰国子女の教育問題について

61118  森本 久美子    

 

◎帰国子女の定義

海外旅行で外国に行ったのではなく、かなりの期間海外に存住したのちに帰国した者のことを言う。

《参考》平成8年度の帰国子女数(海外に1年以上在留して帰国した学齢期の児童、生徒が対象)は文部省学校基本調査によると、小学校段階7442人、中学校段階2929人、高等学校段階1810人の、計12181人であった。                             

 

◎文部省の施策 〜帰国子女教育の充実のために〜 

国立学校に帰国子女教育学級を設置、公立及び私立の学校に帰国子女教育研究協力校を指定するなどの施策を行っている。 

 

◎在外中の教育施設

日本人学校、補習授業校、私立在外教育施設、現地校・国際学校がある。

 

◎教育における問題

海外では日本語を保持しながら外国語を習得し、帰国後は外国語を保持しながら日本語を発展させていくというバイリンガリズムの問題である。  

 

◎教育における重要点 

単に国内の教育への適応を進めるというだけでなく、海外で身に付けた能力・適性などの保持・伸長及びその活用を図る必要がある。又、他の児童・生徒についても帰国児童・生徒との人間関係を確立する必要がある。                                       

 

◎参考文献

1.川上 繁(1991.12)『海外子女教育史』 (海外帰国子女教育振興財団)

戦後の海外子女教育の歩みの集大成。海外子女教育の歴史を正確に伝えるため、

本編と資料編の2分冊で構成されている。

本編……海外帰国子女教育の歴史、関係諸機関の歴史、海外帰国子女教育に関する 教育の歩み。

資料編…諸統計や関係文献リスト、関係法令・答申・通達など幅広い文書資料を所載。

 

2.佐藤 郡衛(1997.2)『海外・帰国子女教育の再構築─異文化間教育学の 視点から─』(玉川大学出版部)

従来の海外・帰国子女教育の研究は実践的課題の解決を急ぐあまり、理論的枠組を欠くきらいがあった。この書では、異文化接触・異文化適応の実態と社会的要因を 解明し、異文化との相互作用を推進するための海外・帰国子女教育を構想すること を目的としている。

 

3.竹長 吉正(1991.10)「帰国子女教育の一環としての日本語教育─国レベルの体制をふまえつつ─」『講座 日本語と日本語教育』第16巻 396─42 3(明治書院)

教材、教育の実例、教育を行う時の留意点、帰国子女が抱えている問題について書かれている。

 

4.野元 菊雄(1967.01)「帰国者の言語生活」『言語生活』184 66─ 71(筑摩書房)

筆者の渡英経験を基に書かれている。更に、筆者の息子の渡英中の教育の状態、帰国後の教育問題についても書かれている。

 

5.荻山 昇治(1977.05)「帰国子女の日本語教育」『言語生活』308 44─51(筑摩書房)

海外の日本語教育施設と帰国子女の受け入れ、指導事例、在外中の教育に対する考 え方について書かれている。

 

6.久保 真季 他(1994.03)『日本語学』13 特集 帰国子女(明治書院)

帰国子女教育の現状、帰国子女学級の言語的状況、異文化理解としての日本語教育、帰国子女の文化的摩擦・異文化体験、帰国子女のバイリンガル能力の保持、国際化時代における帰国子女教育、帰国子女の行動特性・言語意識、海外日本人学校における教育、在日外国人学校の日本語教育について書かれている。

 

7.角 有紀子 他(1988.11)「帰国子女と日本語教育」『日本語教育』66 (日本語教育学会)

帰国子女の日本語にみられる諸問題や話し言葉から書き言葉への変換による指導、作文指導におけるテ−マの選び方などについて書かれている。

 

8,『chapter3−1』(1998.07 現在)

http://www.sfc.keio.ac.jp/`s94625sh/activities/ume1/ch3−1.html

帰国子女と愛国心というテ−マのホ−ムペ−ジ。帰国子女に対して「ナショナリティ−を明確にする必要があると思ったことがあるか。」「帰国後、日本の生活・学校に慣れるまでどのくらいかかったか。」などの質問をし、帰国子女の土地への帰属意識を考察している。

 

9.『海外子女教育振興財団のホ−ムペ−ジ』(1998.07現在)

http://www.joes.or.jp/

渡航前・滞在中・帰国後の3つに分かれたそれぞれの教育に関する情報が掲載され ている他、国内受入校の一覧、帰国子女編入学情報などが紹介されている。

 

10.『海外帰国子女相談室』(1998.07 現在)

http://netcity.or.jp/shidokai/b−l.htm 出国前・滞在中・帰国後の子供たちを取り巻く教育問題など、子供たちが抱えているさまざまな不安や悩みの解決のために相談室を開室している。スタッフとして、海外在住経験の豊富な者、心理学を専攻した者、子供に帰国枠受験させてきた者が担当している。

 

11.『帰国子女の会 フレンズ』(1998.07 現在)

http://www.mmjp.or.jp/friends/

海外滞在経験のある母親たちによるボランティア団体「帰国子女の会 フレンズ」 のホ−ムペ−ジ。相談受付等の活動内容の紹介、転・編入学情報などを掲載してい る。

 

12.『海外子女教育・帰国子女教育に関する総合ホ−ムペ−ジ(CLARINET)』 (1998.07現在)

http://www.naec.go.jp/kaigai/1997/co− 9710c.htm

帰国児童生徒の都道府県別在籍状況(平成8年度)の数字や受入段階の整備、帰国 子女教育の充実などを掲載している。