木林理恵・岡崎博紀・木山幸子・施信余・黄カウン(2005)「初対面2者間会話におけるディスコース・ポライトネスの基本状態の調査 - スピーチレベル/接頭辞「お」「ご」の付く語/助詞「ね」「よ」「よね」という要素から - 」 科学研究費報告書『多文化共生社会における異文化コミュニケーション教育のための基礎研究』(研究代表者:宇佐美まゆみ),26-45

 ポライトネスでは、守られて当たり前の状態を「基本状態(default)」といい、そこからの動きによって、語用論的ポライトネス効果が生み出される。そのため、ポライトネスを相対的に捉えるためには、特定の談話の「基本状態」を同定する必要が出てくる。  談話レベルで捉えるディスコース・ポライトネスにおいて、日本語の成人初対面2者間会話における「基本状態」を探るため、1)スピーチレベル、2)接頭辞「お」「ご」の付く語、3)助詞「ね」「よ」「よね」の3つの要素を取り上げ、その頻度と割合を示した。
 発話文全体・発話文末、発話文全体のスピーチレベルでは、男性ベース18会話、3名の35歳のインフォーマントに、同性・異性の「目上(45歳)」「同等(35歳)」「目下(25歳)」の計6通りの相手、15分の会話のうち最初の3分間を文字化。「S」Super Polite form、「P」Polite form、「N」Non Polite form、「NM」Non-Markerなどの観点でコーディングを行った。
 接頭辞「お」「ご」の付く語、3)助詞「ね」「よ」「よね」に関しては、初対面2者間男性ベース18会話に加え、初対面2者間女性ベース72会話の冒頭の3分間を使用。接頭辞は名詞・形容詞・形容動詞・副詞に「お/ご」がついているものを対象、「ね」「よ」「よね」の3タイプをコーディングした。  ベースの発話・対話者の発話・ベースと発話者の発話の3つの観点から結果。基礎的な数字を報告するにとどまっているが、資料としての意義を持つと考えている。(文責:藤本かおる)


石田浩二(2005)「ニュージーランド人日本語学習者の相づち「ええ」についての知識―母語話者と学習者の解釈の比較―」:『日本語教育』127号 1-10

 これまで相づちの研究が主に頻度、種類、機能などの分析を焦点が当てられている。学習者が日本人同士の会話の中に使用される相づちに対して、どのように解釈しているかといった研究があまりない。異文化コミュニケーションの誤解の原因は理解においても研究する必要がある。
 本稿は日本人同士の会話をニュージーランド人日本語学習者(LG)と日本語母語話者(JG)に見てもらい、相づち「ええ」に関する認知と解釈を比較した。その結果JGは相づち「ええ」に対して、丁寧であると解釈したが、LGはそのような認知はなかった。(文責:柳悦)


任 樹(2004)「日韓断り談話におけるポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」『社会言語科学』第6巻 第2号,27-43

  これまでの断り談話研究においては、ネガティブ・ポライトネスに焦点を当てたものが多かった。本稿は日本語と韓国語の断り談話においてポジティブ・ポライトネス・ストラテジー(PPS)がどのように現れるのかを明らかにすることが目的である。ロールプレイ調査から得られた、日本語話者と韓国語話者のそれぞれの資料を基に、PPSを「量的・質的差異」「ウチ・ソト・ヨソによる差異」「男女差」という観点から分析を行った。その結果、1)PPSの量は、日本語より韓国語のほうが多い。(2)PPSの質に関しては、日本語より韓国語のほうが相手のポジティブ・フェイスを重んじる表現を多用する。(3)日本語に見られるPPSは「ウチ・ソト・ヨソ」の3つの区切りを持ち、韓国語はそれらの分類に従わない。(4)PPSの男女差は、韓国語より日本語のほうが顕著であることを明らかにした。この報告は、実際の会話で行われた断り場面を考察したわけではなく、特に「ウチ・ソト・ヨソ」意識を韓国語と日本語の同じ枠組みで扱ったことに関しては疑問を感じるが、同じ場面においても日本語話者と韓国語話者が各々好むPPSがあり、発話の内容もその文化で良いとされるコミュニケーション・ストラテジーがあることを示唆したことは大いに評価できる。 (文責:崔 文姫)


小林ミナ(2004)「「プラス評価」と「マイナス評価」の質的相違からみた教育現場への還元可能性」『平成12年度〜平成15年度 科学研究費補助金基盤研究』

  本論文では『母語話者評価研究の成果は教育現場への還元可能か』について議論されている。  調査方法は、中級レベルの日本語学習者が、日本人とおこなっている自由会話場面をビデオ取りしたものを一般の日本語母語話者(91名)に視聴してもらい、印象や感想を自由に書いてもらう。そのコメントを『肯定評価と否定評価』に分け、「その評価には具体的な発話箇所の引用があるか」の観点から分類し考察を加えている。  その結果一般の日本語母語話者にとっては、マイナス評価は具体的に指摘することは容易であるが、プラス評価したところを、根拠をもって具体的に指摘するのは困難であること。それゆえ、具体的・個別的なコメントが得られた「マイナス評価」の内容を学習内容に還元することは比較的容易であるが、抽象的・全体的なコメントが多い「プラス評価」の還元は、困難であることが予想される。    本論文で得られた知見から、専門家としての日本語教師に求められる評価の姿勢、技量は、「悪いところを直す、指摘する」という以上に、「良いところを認め、伸ばす」という姿勢、技量がより重要であり、より求められている」としている。 (文責:十市佐和子)


メイナード,K. 泉子(2001)「心の変化と話しことばのスタイルシフト」『言語』30.6月号,38-45

 本論文は、言語表現、特に話し言葉のスタイルに焦点を当てて、心と言語の関係を考える。著者は話し言葉のスタイルを三つの型(相手意識型、相手アピール方、相手無視型)に分ける。ドラマから実例を観察することに通じて話し方のスタイルが心の変化と共にどのようにシフトするかを議論する。 著者は心の変化と話し言葉のスタイルシフトを分析して、心とことばが密接な関係があることを指摘される。日本語学者にとって、日本人の相手の発話意図を正確に理解することに有意義である。デス・マス体が日本語の独特な表現で、分析も複雑になるが、コミュニケーションの視点から見ると本論文の観点が他のことばにも通用できると思う。 (文責:ホウイン)


大浜るい子(2000)「日本語の自然会話における真偽疑問文と応答詞「はい」の関係について」『北海道大学留学生センター紀要』第4号,58-79

 日本語学習者の中には、真偽疑問文に対して「はい」のみで応答し、ぶっきらぼうな印象を与えてしまう人がいる。応答には応答詞だけでなく、「そうです」や疑問文の述語の繰り返しなどを組み合わせて答えるのがよいと教えられることがあるが、どのような真偽疑問文にもそのような応答が適切なのであろうか。 方法:日本語母語話者による自然な会話90組を対象とし、その中で使用された585の真偽疑問文とその応答形式を分析した。結果:応答形式としては@「はい」のみの応答、1.「はい」のない応答、2.「はい」を伴う応答が区別されたが、各応答形式に対応する真偽疑問文にはそれぞれ固有の特徴がみられた。母語話者たちは、真偽疑問文で表された命題を応答者自信が疑問文より前に表示しているかどうかによって、3タイプの応答形式を使い分ける傾向にあることを明らかにした。 (文責:ゼイエン)


大倉美和子(2002)「語用論研究と日本語教育-メキシコ人と日本人の「誘いを断る発話」-」『対照研究と日本語教育』国立国語研究所,109-127

 他言語の社会で人と接触する際に誤解が生じたり、コミュニケーションが成り立たなかったりする事態を避けるためには相手の社会の交渉原理を知り、その原理にかなった言語行動ができるよう指導する言語教育が重要である。断るの発話は社会によって発話構成要素のちがいがある。これらのことは関係構築に影響するため、多言語社会と接触する際に留意する必要がある。それによって、言語教育により具体的な提案が可能になる。  本研究では日本語話者とメキシコスペイン語話者が接触する際に、「招待を断る」場面で何を述べることが必要であるかを明らかにした。メキシコのスペイン語社会では男性、女性ともに日本語社会よりも招待を断る際に多くの発話要素が使用されているとわかった。要素数から見たら、日本語の方が学習者にとって負担負担が少ないが「せっかく」、「ちょっと」、「ご招待」などの表現や文末詞の「けど」、「が」、「んですが」などのような文末表現の学習もあわせて行う必要がある。要素数は少なくても語形式や、語彙の運用についての知識と使用が求められる。(文責:ディアンニ・リスダ)


小池真理(2000)「日本語母語話者が失礼と感じるのは学習者のどんな発話か−「依頼」の場面における母語話者の発話と比較して−」『北海道大学留学生センター紀要』第4号,58-79

 日本語学習者が日本の社会で人々と円滑にコミュニケーションを取るためには、言語形 式ばかりではなく、発話行為上の語用論レベルでの知識を習得することが大事である。 日本語学習者の依頼の発話行為を母語話者に評価してもらった結果、母語話者は学習者の終助詞「ね」の多用や「明日時間がありますか」と突然尋ねる用件の切り出し方、可能形を使った依頼表現、また聞き手とネゴシエーションが不足した一方的な談話展開に失礼な印象持つことが分った。同じ依頼場面においても、母語話者は、聞き手の負担に遠慮を示す発話行為や聞き手の負担の軽減を提示する発話行為をし、聞き手の反応に応じたネゴシエーションを行う反面、日本語学習者はこういった発話行為の不足がみられた。学習者が、依頼の場面において母語話者と円滑なコミュニケーションを行うためには、談話展開の中で、聞き手に対して依頼のための遠慮や負担の軽減を表明しながら、聞き手への反応に応じてネゴシエーションすることが大切であることを示唆している。(文責:崔文姫)


野田尚史(1998)「「ていねいさ」からみた文章・談話の構造」『国語学』194号,102-89

 ていねい体の文と普通体の文が混ぜて使われている文章・談話を材料に、「ていねいさ」の観点から文章・談話の構造を分析し、次のような結論を導き出した。 (1)文章・談話を構成する文には、五つの種類がある。話し手の心情を表す「心情文」、従属節のようにほかの文に従属している「従属文」、単に事実を述べるだけの「事実文」、判断や説明を表す「主張文」、質問や命令を表す「伝達文」である。 (2)ていねい体の文が基調の文章・談話は、聞き手を意識する主張文や伝達文を中心に構成されている。その中に聞き手を意識しない心情文や従属文があると、その文は、聞き手をていねいに待遇するかどうかを考慮しない普通体の文になる。 (3)普通体の文が基調の文章・談話は聞き手を意識しない事実文を中心に構成されている。その中に聞き手を意識する主張文や伝達文があると、その文は、ていねい体の文になることがある。 (文責:ゼイエン)


中田智子(1991)「会話にあらわれるくり返しの発話」『日本語学』10巻10号,52-62

著者は会話に現れる繰り返し発話に注目して、繰り返し発話の機能・作用を参加・寄与、共感、強調、情報伝達、談話構成という五つのポイントに整理したが、コンテクストの理論を基礎として、それらの繰り返し発話を検討すると、どんな心理的な機能・作用をまとめられるかと考えている。例えば、興奮、緊張、困惑など。 そして、取り上げた二種類の例は一見一般性を持っていないが、データ分析としては効果があると思われる。特殊な例を分析して、短い時間で研究の目的を果たすことができると考える。 著者の多角的に発話を検討することが談話分析への一つの有効的なアプローチだと思う。それで、言語本能論をもとにして、中国語の談話も同じように多角的に分析すると、日本語と中国語の共通点を見つけるかどうか、データ分析の結果がどうなるかと考えている。(文責:ホウイン)


佐藤美重子(1989)「技術研修員のための日本語研修30時間コースへの非言語伝達導入の試み」『日本語教育』67号,87-98

身ぶりやしぐさなどの非言語伝達は、コミュニケーションに大きな影響を与えるものである。JICA九州支部の技術研修員のための日本語研修は30時間という短期間のもので、効率よく日本語を学習することが求められる。日本語能力をおぎない、また不必要な誤解を避けるため、研修の中でテキストの内容に応じて非言語伝達を導入することを試みた。各課ごとに基本的な身ぶりやしぐさを説明し、練習をおこなった。非言語伝達の方法は文化圏によって様々であり、しぐさの理解は人間関係を円滑にし、研修員の日本語能力の向上にも関連するという印象を強くしている。(文責:小松恭子)


杉戸清樹(1989)「ことばのあいづちと身ぶりのあいづち」『日本語教育』67号,48-59

 あいづち行動において、身ぶりの役割は重要だが今まであまり記述されてこなかった。本稿では録画による談話資料を用いて、言語によるあいづちと非言語によるあいづちを記述し、分析した。その結果、あいづち的な発話に身ぶりがともなうものは個人差が見られないが、無言のまま身ぶりだけでのあいづちは個人差が大きかった。発話によるあいづちと身ぶりのあいづちは個人ごとに平行的な関係であった。また話題を進展させる発話には、話者自身のうなずき、他の参加者からのあいづち共に多く見られた。(文責:小松恭子)


畠弘巳(1988)「外国人のための日本語会話ストラテジーとその教育」日本語学,第7巻第3号,100-117

 それまでの伝統的な教授法(文法訳読法、直接法、オーディオリンガル法)には、会話教育は、存在していなかった。(オーディオリンガル法においても、話すことが書く、読むことに比べて重視されているといってよいが、本当の意味での会話教育は、存在していなかった。)本論文では、会話が上達するためには、文法的知識、語彙的知識を増やして、正確なものにするだけではなく、「会話ストラテジー」を身につける教育の比重を大きくする必要があるとしている。その中でストラテジーには、どのような項目があるのかを「日本語会話ストラテジーの項目リスト」として挙げている。しかし、論者も触れているとおり、「会話ストラテジー」とはなんであるか必ずしも明確ではない。全体の流れは、「どのような会話ストラテジー教育が必要性か」を現代の外国語教育の流れの中に位置づけて、述べている。(文責:十市佐和子)


水谷信子(1988)「あいづち論」『日本語学』12巻7号, 4-11

 日本語の会話における一つの大きな特徴として「あいづち」が議論されている。日本語での「あいづち」は量的には非常に多く、質的には相手の発話を促し励ますもので外国語とは異なるため、日本語教育では特に指導が必要な項目である。また、あいづちは発話の文の単位や文末表現と密接に関わる。会話におけるあいづち、「繰り返し」「言い変え」等、相手の発話の確認・補強・文の完成は日本語の「共話」的性質を示唆している。(文責:西郡 仁朗)


堀口純子(1987)「コミュニケーションにおける聞き手の言語行動」日本語教育,64号,13-26 (まとめPDF


鮎澤孝子(1987)「「話しことば」の特徴―聴解指導のために―」『日本語教育』64号,1-12

 談話の場面における聴解の力を伸ばす指導及びそのための教材作成にあたっては、談話の日本語の実態を知ることがまず大切である。日本語の場合、日常談話の1文が短く、平均して3-6文節で、語彙から見ると名詞が少なく、形容詞・副詞が多く、またあいづちによく使われる感動詞も多く含む。さらに、文構造では述語、独立語などが多く5つの成分以上の文がほとんどない。また日常談話文の構造が単純で短いのが、話し手と聞き手の心理的段階の関係に応じて、その積み重ねによって少しずつ段階を追って情報の伝達を行うからと言える。さらにプロソディーに関わるピッチ、ポーズ、プロミネンスなど、話し手の意図によって、それらで文を修飾する場合もある。学習者の聴解・会話力を伸ばすために、会話の日本語として、どんなものなのか、その実態をとらえ、その知見に基づいた指導が必要である。(文責:柳悦)


メイナード K. 泉子(1987)「日米会話におけるあいづち表現」『言語』16巻2号, 88-92 

 日米の会話で「あいづち」が出現する頻度・形態・コンテクストなどが実証的に(学生同士の会話のビデオ記録を使用)検討されている。日本語はあいづちの頻度が高く、話し手の間、文の終り、終助詞、間投助詞、うなづきに対して発せられるというコンテクスト上の特徴があり、形態上短い表現をとることが多い。一方、英語では、形態的には類似し短い表現が多いが、多くの場合文の終わりの間の際に発せられ、あいづちとしてのうなづきは少ない。  今後の展開として、視線・イントネーション・体の動き、広範囲の調査、異なるジャンル(意見対立の会話、討論)での会話、社会的地位の上下、親疎、性別、ストラテジー、談話構造、 社会的コンテクストなども併せた研究が必要だと提案している。 (文責:西郡 仁朗)


ザトラウスキー,ポリー(1986, 1987)「談話の分析と教授法(I)(II)(III) -勧誘表現を中心に -」日本語学,第5巻第11号,第12号,第6巻第1号

従来の日本語教育では初級では「構造文型」による不自然な会話が指導されてきた。また、中級になってから「表現文型」を学ぶ場合があるが、これも機能に注目してはいるものの自然なものではない。本論文では、電話での勧誘を例に、自然な会話の「談話型」には、どのような現象が見られるかが詳細に分析され、相づち・ためらい・言いよどみ・倒置等が、会話を進行させる上でストラテジーとしていかに重要であるかが述べられている。また、それが構造文型や表現文型とは大きく異なるものであることが示されている。提言として、コミュニケーションの学習のためには、初級の初めから談話型の要素を入れた指導が必要であり、そのための方法論(インタープリテーションなど)が紹介されている。全体を流れる考え方は、現在の言語学は、言語を相互的で動的なものとしてとらえたパラダイムに移行しており、これをとりいれた教授法が必要だということで、談話の実例だけではなく、言語学や日本語学、エスノメソドロジーなどさまざまな先行研究をもとに論が展開されている。(文責:西郡 仁朗)


ネウストプニー, J.V.(1981)「外国人の日本語の実態(1)外国人場面の研究と日本語教育」日本語教育第45号, 30-40

外国人話者が実際にどのように日本語を使っているのか。外国人話者が参加している場面の多くは特殊な言語場面「外国人場面」であるとし、その中で外国人話者、母国語話者それぞれがどのようにコミュニケーションを変容させているか、また、外国人場面からどのような資料が得られ、どのような研究が求められるかを考察した。(文責:藤本かおる)


BROWN, Penelope and LEVINSON, Stephen C.(1978, 1987)"Politeness - Some universals in language use" Cambridge University Press.の要約表(PDF)