日本語の敬語
平成17年3月30日,文化審議会は文部科学大臣から「敬語に関する具体的な指針の作成について」諮問を受けました。文化審議会は,国語分科会での約2年間にわたる検討を経て,平成19(2007)年2月2日に「敬語の指針」(答申)をまとめました。この答申の概要は,以下の通りです。なお,本答申の全文については,文化庁ホームページを参照してください(参照:http://www.bunka.go.jp(※文化庁ホームページへリンク))。
「敬語の指針」の概要
指針の性格
敬語が必要だと感じているけれども,現実の運用に際しては困難を感じている人たちが多い。そのような人たちを主たる対象として,社会教育や学校教育など様々な分野で作成される敬語の「よりどころ」の基盤,すなわち,〈よりどころのよりどころ〉として,敬語の基本的な考え方や具体的な使い方を示すもの。
敬語についての考え方
基本的な認識
• 敬語の重要性は,次の点にある。
-相手や周囲の人と自分との間の関係を表現するものであり,社会生活の中で,人と人がコミュニケーションを円滑に行い,確かな人間関係を築いていくために不可欠な働きを持つ。
- 相手や周囲の人,その場の状況についての,言葉を用いる人の気持ち(「敬い」「へりくだり」「改まった気持ち」など)を表現する言語表現として,重要な役割を果たす。
・敬語は,人と人との「相互尊重」の気持ちを基盤とすべきものである。
・敬語の使い方については,次の二つの事柄を大切にする必要がある。
・ 敬語は,自らの気持ちに即して主体的に言葉遣いを選ぶ「自己表現」として使用するものである。
・「自己表現」として敬語を使用する場合でも,敬語の明らかな誤用や過不足は避けることを心掛ける。
留意すべき事項
(1)方言の中の敬語の多様性
全国共通語の敬語と並ぶものとして,将来にわたって大切にしていくことが必要である。
(2)世代や性による敬語意識の多様性
世代や性による敬語の使い方の違いには,その敬語についての理解や認識の違いが反映していることを考慮するとともに,他者の異なる言葉遣いをその人の「自己表現」として受け止めることが大切である。
(3)いわゆる「マニュアル敬語」
場面ごとに過度に画一的な敬語使用を示す内容とならないよう注意する必要がある。ただし,マニュアル自体は敬語に習熟していない人にとっては有効である。
(4)新しい伝達媒体における敬語の在り方
社会の各方面で,それぞれの目的や状況に即した工夫や提案がなされることを期待する。ここでも「相互尊重」と「自己表現」が原則である。
(5)敬語についての教育
人が社会生活において敬語を活用できるようになる過程では,学校教育や社会教育での学習と指導が重要な役割を果たす。
敬語の仕組み
敬語の種類と働き
-敬語は,以下の5種類に分けて考えることができる(右側は従来の3種類)。
5種類
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3種類
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尊敬語
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「いらっしゃる・おっしゃる」型
相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて,その人物を立てて述べるもの。
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尊敬語
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謙譲語
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「伺う・申し上げる」型
自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先の人物を立てて述べるもの。
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謙譲語
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謙譲語(丁重語)
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「参る・申す」型
自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
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丁寧語
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「です・ます」型
話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
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丁寧語
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美化語
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「お酒・お料理」型
ものごとを,美化して述べるもの。
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従来の3種類との関係
-敬語は,「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類に分けて説明されることが多い。ここでの5種類は,従来の3種類に基づいて,現在の敬語の使い方をより深く理解するために,3種類のうち,「謙譲語」を「謙譲語
」と「謙譲語 」に,また「丁寧語」を「丁寧語」と「美化語」に分けたものである。
<出典:2007年
2月 2日 日本文部省文化審議会発表 「敬語の指針」>
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